小田原市・ジャンパー問題 歪められた生活保護行政
小田原市・ジャンパー問題
歪められた生活保護行政
組織的な人権侵害 ねじれた集団心理
生活保護手帳には、生活保護実施の態度として、「法令遵守と公平な適用」、「常に研さんにつとめる」、「被保護者は公的扶助を受ける権利を有する」、「被保護者の立場を理解し、よき相談相手につとめる」等と明記されています。
小田原市の一件は、被保護者による10年前のCW(ケースワーカー)への傷害事件を期に、「士気高揚のため」と報道されていますが、作成されたジャンパーを常に着用し、事務処理や家庭訪問まで行っていたのは、組織的な人権侵害と言われても仕方がないことだと思います。個々人の意識は不明ですが、ねじれた集団心理の表れではないでしょうか。
背景にある課題 京都市でも共通
しかし、その背景には、生活保護業務の現場に共通する課題があると考えます。
生活保護の現場では、自治体の人員削減計画によりCWの配置人員が不十分なため、年度当初から90世帯以上を担当するCWも少なくありません。また、京都市でも専門職配置ではなく、大半が知識や経験のない事務職員の配置となっています。
その一方で生活保護業務は、日常的な電話や来所による相談対応、担当世帯への定期的な家庭訪問と訪問記録の作成はもちろん、世帯収入や世帯変更による保護費の変更処理決定、担当する地域に新規申請があれば、その調査及び決定、また、年1回の一斉課税調査により未申告収入があれば、保護費の返還処理事務と決定後の納入指導及び進行管理、さらに、ころころ変わる年金制度に対応するための年金加入状況や稼働年齢者に対する稼働能力の進行管理、医療扶助の向精神薬の重複指導や、ジェネリック医薬品への協力依頼など、保護世帯の生活全般に対して状況把握や管理・指導が求められています。当然ながら知識や経験が求められます。
課題解決へ組合の役割重要
慢性的な人員不足により、余裕もなく、研修などが不十分になると、CWだけでなく、管理監督職員も含め、人権意識低下や士気の低下がどこの職場でも起こる危険性があります。
現象面だけでなく、その背景にある職員体制や人権意識にかかる業務研修の充実など、課題の解決に労働組合としても取り組むことが重要と考えます。
福祉事務所評議会議長 久安隆行