自粛によって見えにくくなる虐待 ― コロナ禍の自治体職場では今②
自粛によって見えにくくなる虐待―コロナ禍の自治体職場では今②
児童福祉センター児童相談所・一時保護所
子どもたちへの新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐために政府が行った全国の小・中・高校の一斉休校。京都市でも約3カ月間休校になり、外出もままならず、家庭という密室で過ごすことを強いられた事で虐待の潜在化が懸念されます。児童福祉センター児童相談所支援課で虐待班のケースワーカー(CW)として働く市職労の仲間と、一時保護所(一保)で働く市職労の仲間に聞きました。
コロナ禍で現認不可も
―児童相談所―
学校が休校になっていた期間、虐待通告などの状況は?
CW 普段は学校や保育園で虐待による子どものけがやあざを発見して通告されることが多いのですが、休校期間中は学校や保育園などからの通告数は減りました。ただ、在宅勤務の影響か近隣住民からの通告は若干増え、通告後48時間以内に子どもの安否を確認(現認)するルールがあり、現認に行く回数は増えました。
表面化したのは、休校明け、受傷での学校からの通告が立て続けにあったことだと思います。地域班の職員からは、子どもと常に一緒に過ごすことに疲れた保護者から「どうしたらいいねん!なんとかして!」と悲鳴のような相談が来たと聞いています。
コロナ禍で行う家庭訪問や面談も、行っていいのか判断に困ることもあり、コロナを理由に保護者に現認を断られることもありました。子どもに何かあった時に「コロナのせい」とは言えないので難しかったです。
定員以上の受け入れも
―一時保護所―
一時保護所での状況は?
一保 休校期間が長かったので心配していました。学校再開後から学校等の通告で保護するケースが相次ぎました。コロナの影響なのかは分かりませんが、中高生より小学生の保護が増えています。
ずっと家で過ごしていたことがしんどくなっている子が結構います。保護は基本2カ月以内ですが、なかなか家に帰れない子も増え、定員以上の受け入れもあります。
感染対策に検温や入所後5日間は感染の可能性を考慮し、必ずマスクを着用することにしています。子どもに距離を取るように話していますが、どうしても密になってしまいます。先日ケガで通院が必要になったことがあり、感染の危険を病院から言われたり、普段より時間もかかって大変でした。
子どもの命守るために人員増が必要
全国的に児童相談所の職員体制の充実が求められていますね。
CW 心理士を含め増員は必要です。現在、児相で8割の職員が3年未満の勤務年数です。経験が浅いと見通しを持った支援や援助が上手くできず虐待班で言うと、保護期間が長くなってしまうこともあります。経験を積んだCWが増えるような職員配置にして欲しいです。1人のCWが100件以上を担当することもあり、仕事内容は精神的な負担も大きいため昨年は多くの病休者が出ました。子どもたちのためにも職員の育成と増員を強く望みます。
コロナ禍では“見えにくくなる虐待”への対策を考える必要があります。