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2020年12月28日

2021新春座談会ー私たちの仕事は市民の幸せを応援する誇りある仕事ー

私たちの仕事は市民の幸せを応援する誇りある仕事

2020年は新型コロナ感染症の拡大の中で自治体の役割が問い直される一年となりました。
コロナ禍で保健所や保健師の仕事が注目されていますが、感染症対応の部署では、異常な長時間労働が何カ月も続いている過酷な状況があります。

市民の命、暮らし、健康を守る最前線に立つ公衆衛生行政のあり方について、永戸有子委員長の進行で、新採からベテランまで保健師4人に集まってもらい、座談会を行いました。

 
永戸委員長  京都市職労は、コロナ禍で奮闘する保健師のみなさんの労働条件の確保とともに、公衆衛生行政や保健師の仕事のあり方について検証し発信しようと、市役所の内外で取り組みを進めています。
11月1日に公衆衛生行政の充実を求めるフォーラムを他団体と一緒に開催。市職労からは保健師への聞き取り調査をふまえ報告しました。現場の保健師としての井上さんの発言「京都市には公衆衛生はないと思う」には衝撃が走りました。同時にそれは、住民にとって必要な行政になっているかという点で、自治体全体の問題につながる指摘だと思いました。
門川大作京都市長は先日のニュースで、「大都市の中で保健師の数が一番多い」と言いましたが、多いのならなぜこんなに苦しい状況になっているのか。実態を明らかにしていくことも重要です。
まずみなさんが今どんな仕事しているのか教えて下さい。

 
田中さん  高齢者虐待のケース対応や、緊急通報システムに関する業務で、事務的な仕事が膨大にあります。他には健康づくり業務、健康づくりサポーターの育成事業やがん検診の業務に携わっています。
高齢の虐待ケース業務と健康づくりの業務の違い、異質さに、毎日頭を切り替えながらこなしている状況です。
医療衛生コーナーと合併したこともあり、感染症業務が重なってきました。
新型コロナの対応で最初の派遣組として4月に応援に行きました。

 

加藤さん  母子保健担当で、乳幼児の健診、新生児や妊婦さんの訪問をしています。新採研修では大幅に変更がありました。配属後に新型コロナで健診が休止になり、健康づくり教室などの事業も休止。通常業務と違う流れの中で入職し、変化する業務に追いつけるように必死です。

 
大島さん  私は、加藤さんと同じ母子保健を担当しています。
現在は細分化がされていますが、保健所(指導係)時代の採用で、成人・母子・精神・感染症などの保健師業務の全体を担っていた時代を経験しています。井上さんが言った通り私も「公衆衛生はない」に同感です。
はぐくみ室は、本来はお母さんたちがしんどくなって虐待に至ってしまわないように予防する仕事です。しかし虐待対応に特化して、「予防」より「ハイリスク」の業務がどんどん増えているのが実感です。
ハイリスクになるまでのお母さんをキャッチする場だった健診が、体制が変わり、保健師が問診をとらなくなり、アセスメント能力が発揮できなくなっていることに危機感があります。
わずか10分の問診時間で、保健師は問診票以外の情報からニーズをくみ取りフォローにつなげていくスキルを磨いてきましたが、今はその場がなくなりました。

 
井上さん  私は高齢福祉を担当しています。何かが起こってから動くという状況で「予防」の視点がありません。
新型コロナの対応も一緒です。もっと先手を打って保健師を増やして、感染症予防策の指導に病院や事業所や地域に出向いていけたら、感染拡大を抑えられるのではないでしょうか。

 
永戸委員長  新型コロナの応援業務はどんな状況でしたか?

 
井上さん  私は4月と10月に応援業務に就きました。
4月との比較では、業務形態では、ずれ勤務が導入されていて、昼出勤して夜までの勤務の人、休日勤務の場合は、平日に振休をいれるなどの対応がされています。時間外勤務時間が減ってはいますが健康的な働き方ではありません。緊急携帯をもって帰宅する人もいます。

 
永戸委員長  応援を出している職場では?

 
大島さん  私の職場では、はぐくみ室、健康長寿推進課、障害保健福祉課で順番に一人ずつ応援を出しました。一人欠けるのも辛いなか、なんとか1カ月乗り切りました。産休などの欠員もあります。
予防的な介入が抜け落ちて後手後手の対応なので、めどがつかないし、このままでは現場は回らなくなります。

 
永戸委員長  新型インフルエンザが流行したときは地域に保健所がありました。
ベテランの保健師への聞き取り調査で、「その時代は保健所全体で関われた」と聞きました。また、担当地域の小学校で感染者が出て、一斉休校という話が出た時に、学校から「給食が唯一の食事になっている子どもも多い地域で休校はできない」と訴えがあり、地域や学校の事情をよく知っている保健師が京都市と掛け合ったこともあったそうです。
地域の状況を把握しているからこその事例だと思いました。

 
大島さん  今はさばくので精一杯で、地域の相談窓口ではなくなってきているのかもしれません。

 
永戸委員長  保健師の仕事は、住民全体を対象として地域ごとに担当を持つ「地区担当制」から、業務(分野)ごとに担当を分ける「業務分担制」へと、体制見直しの度にシフトしてきました。保健師の数は増えているけれど、従来事務職が担ってきた仕事も含め、対応業務がものすごく増えているのが現状です。

 
田中さん  保健師として就職したはずなのに、事務職、ケースワーカー業務も多くあります。
ここまで業務分担が細分化されていると思いませんでした。
健康長寿推進課では当然に保健指導しているものと思っていましたが、健康診断後の保健指導は保険年金課の仕事でした。
健康づくりは基本的に単発の仕事しかできていません。地域の人たちと一緒に健康を考えていくことができません。

 
加藤さん  私は名古屋の大学で名古屋市の地区担当制も学びました。
京都市が業務分担制になっていることは知っていました。
国や保健師協会としても地区担当制を進める中で、京都市だけ逆行しているイメージがあります。
業務を分担することによって専門的に集中できるメリットや、いっぽうでデメリットも。それを解消できる方法があったらいいのになって思います。

 
永戸委員長  2010年に保健所が1カ所に。その2年前に、成人保健医療と母子精神に分かれています。機構改革や業務の細分化などの歴史を振り返って現在の新型コロナ対応を考えることも重要です。

 
井上さん  いま、京都市が地区担当制で新型コロナ対応をできていたら、どうなっていたかなと思うのです。
電話や入院対応などは一つに集中する必要はありますが、自宅療養する人の健康観察などは地域でできる仕事です。
予防や指導として、クラスターの発生時、もし、感染症対応ができる保健師が地域にいたら、もっと能動的に動けていたのではないかと。
保健師が本来の力を発揮できるようにするには、やっぱり仕事の切り分けでしょうね。事務作業やケースワーカー業務など切り分けをして、保健師としての専門性を発揮できるようにすることが必要です。

 
永戸委員長  課題があきらかになってきましたね。ではどうすれば明るい展望が開けるのでしょうか?

 
井上さん  もともとの地区担当制に戻してほしい!国は地区担当制を重要視しています。京都市はいま転換期として目指すべきです。
保健師は予防をするための職種。本来は、起こったことを後追いするのではなく、起きる前に止める方法を専門的に勉強しています。それをできる体制づくりが重要です。

 
永戸委員長  最後にベテランのみなさんからは若手へのメッセージを
若手のみなさんからは今日の感想や保健師としての抱負などをお願いします。

 
田中さん  大先輩方の貴重な話が聞けて、「予防」が私たちの大切な仕事なんだと改めて思いました。この機会に保健師業務を今一度確認して、頑張っていきたいなという気持が強まりました。

 
加藤さん  職場で先輩の保健師に相談するとすぐに答えを返してもらえます。
いろいろな視点で物事を見ることができるのは機構改革前の体制での先輩の経験があったからだと思いました。
保健師の業務がハイリスク対応にすごく傾いていることが今日の話の中で印象にあって、「予防」の視点を忘れずもっておく必要があると感じました。

 
井上さん  「自分たちは何をしないといけないか」
流れに任せてしまっては周りが見えなくなるので、ちょっと立ち止まって、市民に対して今何が一番大事なのかを、公衆衛生の視点で見て考えていかないといけないと思います。
特にこのコロナ禍で、今ほど「保健師」という言葉を耳にしたことはありません。
私たちの仕事に誇りをもって、もう少しで定年だけどもうちょっと頑張ろうかなと思えました。

 
大島さん  公衆衛生は普段誰も気づかないような地道な活動です。同時に新型コロナや新型インフルなどの有事の時に一番力を発揮する分野です。
その力を発揮しきれていないことを反省し、教訓にして、私たち保健師も声をあげていかなければなりませんね!
どんな業務に就いていても、市民の幸せを応援するというのはベースとして一緒。そういう仕事って誇らしい。一緒にがんばっていきましょう!