お知らせ・ニュース

2021年12月28日

【新年号特集・新春インタビュー】佐々木酒造 社長 佐々木 晃さん・京都市産業技術研究所 組合員 

【新年号特集・新春インタビュー】佐々木酒造 社長 佐々木 晃さん・京都市産業技術研究所 組合員

現在、京都市が強行する行財政改革計画は、市民生活に影響する公共サービスを縮小、削減するものであり、市民からも職員からも不安や批判の声があります。

2014年に独立行政法人となった京都市産業技術研究所(以下産技研)。行財政改革計画のなかで、いま岐路に立たされています。産技研の組合員への取材からは、公的機関だからこそ担える役割が明らかになりました。

さらに、産技研を利用する中小業者の立場から佐々木酒造社長の佐々木晃さんにインタビュー。産技研は「安心して相談できる、なくてはならない存在」と高く評価します。

私たち一人ひとりが担う仕事の背景には、市民生活があります。


産技研は〝心のよりどころ〟                                                        助けてもらえる安心感が、次の挑戦へ!

佐々木酒造
社長 佐々木 晃さん

日本酒の生産に欠かせない産技研の最先端技術

佐々木酒造が安定して日本酒を生産するうえで、産技研の持つ技術は欠かせません。

酒造りは昔から変わってはいませんが、昔は杜氏が目で見て、香りを嗅いで判断していたので、職人が変わると蔵の酒の味が変わると言われていました。

今は、産技研の最先端の解析技術や機器を使って数値化することで、誰が作っても安定して良いものが作れるようになりました。

自分のところで簡易な分析しかできない部分を、産技研に補完してもらっています。

長い時間をかけて開発した米麹が大反響

産技研との付き合いは長く、新たな酵母の開発や食品原料の開発も行っています。

今年の夏には、産技研と10数年かけて開発した食品原料『べっぴん米糀』を使って、京料理の「木乃婦」、京菓子の「亀屋良長」、「マールブランシュ」、「小川珈琲」といった名店とコラボした商品が近畿のローソンで販売されました。反響が大きく、原料を分けてほしいという問い合わせが数多く来ています。

京都市の他の蔵元さんも巻き込んで供給を助けてもらって、最終的には京都全体に広げていきたいです。

京都の米が消費されて、京都の蔵元が活性化して。これは成功事例にしたいと思います。

この企画では、売上金の一部を、京都市の「はぐくみ未来応援事業」に寄付することになりました。

中小企業を支え、技術力の向上をこれからも

産技研は『心のよりどころ』です。

困ったときには助けてもらえる安心感があるから、新たなことにチャレンジできます。

これからも支援していただいて、大手に負けないように、中小企業の技術力を、高めていってもらいたいと期待します。

 


みなさんが幸せになることが私たちの働きがい

京都市産業技術研究所                                                               組合員

中小企業支援後退の危機
行財政改革計画の影響

産技研は、1916年に京都市染織試験場、1920年に京都市工業研究所が設立され、創設100年を超えます。

染色技術や繊維材料、高分子、金属、窯業、表面処理、バイオ、デザインにわたり、幅広い分野から中小企業の支援をしています。

2014年に独立行政法人へ移行し、4年周期で京都市から産技研に対し中期目標を指示されます。

2022年4月に3期目を迎えることとなりますが、京都市が進める行財政改革計画には、産技研への交付金の見直しが盛り込まれており、厳しい状況に立たされています。

表には見えない〝分析の技術〟で下支え支援

金属系チームには、金属部品の破損や、製品への異物混入等の原因をつきとめるトラブル相談、製造工程の改善の相談が多くあります。

製造工程の改善を探るための分析の結果、商品開発につながったことも。

事業者の相談から自身が編み出した分析方法が教科書に載ることもありました。

しかし、形として表には見えにくいものも多く「成果物」として残りませんが、分析技術が皆さまの下支え支援として役立てればと思っています。

大企業には、企業のなかに分析チームを作り、トラブルの原因追求や、商品開発のための研究などができますが、中小企業にはそれができる体力がありません。

地元中小企業を支える役割が私たちにはあります。

産技研のスタンスはどんな相談でも拒まない

工芸・漆チームは、1年間の研修を経て、京都の伝統産業、文化、芸術を担う後継者を育てていく役割があります。

文化事業やイベントなどに取り組むと共に、歴史ある伝統産業の担い手の育成を継続させていくことも重要です。

先輩から聞かされてきたことは、産技研はどんな相談でも拒まないスタンスで、担当分野にこだわらず「かけこみ寺」的な存在として皆さまのお役に立つということです。

何百年も前に作られた文化財を適切に修復するうえで、どんな素材が使われていたのか明らかにさせるといった相談もあります。

話を丁寧に聞いて問題の解決をはかれるように一緒に考えていくことが求められます。

皆さまが幸せになることが私たちのやりがいです。

多様なニーズに応えられるノウハウは長年の蓄積で

独立行政法人とされた産技研は京都市からの指示により中期計画を立て、成果となる結果が求められています。

いま、どこの業界でも「見える化」が求められていますが、見える化のためには技術、時間、お金が必要です。

産技研が持つ中小企業の多様なニーズに応えられるノウハウは、長年かけて蓄積してきたものであり、公的機関だからこそ担える役割です。