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2022年05月19日

わたしの仕事と市民の生活 My work for the whole community 「市民窓口業務のいま」②

「効率化」だけでは見えない窓口業務

市民窓口課の業務は、単純に各種証明書などを発行する業務という印象ですが、市民の個人情報を扱う重要な内容を含んでいます。

また、来庁する市民に対して丁寧で適切な対応も求められます。業務を担う組合員に聞きました。


正確な事務処理により支援措置対象者の個人情報を守り命を守る

市民窓口課では、DV(ドメスティック・バイオレンス)やストーカー行為被害者のための住民票等の交付請求の制限を行う業務があります。

事前に警察や相談センター等の機関に相談を済ませた人を対象にしています。支援の内容は、支援措置対象者の現住所などの個人情報が記載されている各種証明書について、加害者への交付を制限します。

DV件数は、コロナ禍以前の平成28年から倍増しています。取材をした区は、DV件数が多い地域です。シングルマザーや生活保護世帯も多く、ケアが必要な人から支援措置を受けたいという相談が増えていると言います。

市民窓口課で対応した支援措置対象者の情報は、他部署の市税事務所や保険年金課等の業務にも密接に関連するものであり、区役所全体で支援措置対象者の情報を共有する必要があります。

市民窓口課が繁忙状態になると、支援措置業務も繁忙になります。しかし、支援措置業務の担当者に特別な配慮があるわけではなく通常の窓口業務が求められます。

件数が増える一方で「命に関わる業務であり絶対にミスが許されない」「一回のミスでどういうことが起こるのか。想像しながら何度も確認をしている」

業務を担う組合員は緊張した面持ちで話しました。

市民生活が大変な状況におかれるなかで、窓口の相談も多様化していますが、支援措置業務は担当者のみが対応しています。

正確な事務処理により支援対象者の個人情報を守り命を守る。そのために、人員の配置、体制の強化、他課との連携が必要です。

「京都市全体として取り組むべき事業ではないでしょうか」担当者は語りました。

 

「市民にとって本当に便利になったのか」―書かない窓口

京都市は、ICT(情報通信技術)を活用した区役所での行政サービスのデジタル化による「スマート区役所」を推進しています。

総務省が2021年12月に策定した「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」に基づく取り組みであり、計画では2022年度までに全国の自治体で行政手続きのオンライン化を進める目標を掲げています。

スマート区役所の先行事例として導入されたのが伏見区役所深草支所で試行する「書かない窓口」です。

転入等の手続きにおいて、住民異動届には多数の項目(新旧住所、世帯主、世帯全員の氏名、生年月日、続柄など)の記載が必要となりますが、書かない窓口では、転出証明書等を窓口で職員がスキャン・OCR処理して、住民異動届を作成することで、市民は端末を確認して電子サインするだけで手続き完了とするものです。

市長のFacebookでは、「書く手間を大幅に軽減(導入前:7~8分→導入後:2~3分に大幅短縮)」「全区役所・支所への導入を検討する」としています。

転入等で必要な手続きを済ませるために窓口で書く手間が省かれるのであれば市民にとって利便性が良いものになりますが、実際は、チェックシートへの記載が必要であり、待ち時間は通常の時間の3~4倍となっているといいます。

スキャンの読み取りは完全ではなく、都度、職員が確認し必要に応じて端末への打ち込みをする作業が増え、さらに住基システムと書かない窓口の端末が繋がっていないために、これまでどおり住基システムへの打ち込みが必要です。

時間と手間が増え、繁忙期は書かない窓口を使用しません。財政難と言われている最中に高額な機械を導入し、業務負担は増えているのに、デジタル化の名のもとで職員削減をすすめる口実になることも懸念されます。

「フロアサービスの職員を増やしたほうが市民サービスの向上になる」といった声もあります。

担当する組合員は憤ります。

「せめて住基システムと繋がっていたら便利になると思うが、いま何のためにやるのか。効率が悪いものを使わないといけない。職場の雰囲気も悪くなってしまった」

「どこを向いて仕事をしているのかわからない。市民にとって本当に便利になったのか」