「国葬」問題―市長表明に緊急申し入れ
「国葬」問題―市長表明に緊急申し入れ
半旗掲揚中止・弔意を強制しないよう求める
7月22日、政府は安倍晋三元首相の「国葬」を日本武道館で9月27日に実施することを閣議決定しました。門川大作京都市長は7日の定例記者会見で、市役所本庁舎へ半旗を掲げ、市として弔意を示すと表明。
京都市職労は、9月16日に緊急申し入れを行い、半旗掲揚の中止、弔意を強制しないよう求めました。当局からは「勤務条件に係る申入れとしてお受けした。関係課からは『黙とう』は実施しないと聞いている」とコメントがありました。
民主主義を蔑ろに
「国葬」をめぐっては、法的根拠を欠き、憲法違反に値するものであると法曹界からも厳しく指摘がされています。さらに巨額の税金が投入されるものとして、国民世論においても、各紙世論調査で「反対」が「賛成」を上回っています。
そもそも、「国葬」は第二次世界大戦以前に、大日本帝国憲法のもとで1926年に制定された天皇の勅令である「国葬令」に基づき実施されていました。その役割は天皇中心の専制国家を支える儀式として位置づけられていました。戦後は、日本国憲法の「国民主権」や「基本的人権」に反するものとして失効。法的根拠のない「国葬」を閣議決定によって強行することは民主主義を蔑ろにするものです。
思想・信条の自由を侵害
日本国憲法第19条は、思想・信条の自由を保障しています。
政府は、安倍元首相の「国葬」を実施する理由について、安部元首相の業績を評価して「国全体」として敬意と弔意を示すべきであると説明しています。
安倍元首相の業績に対する評価は国民一人ひとりが自主的に行うものであり、個人の内心を統制することはあってはなりません。
政府の言う「国全体」とは「国民全体」であり、特定の人物への「弔意」を国民に求めることは、憲法が保障する思想・信条の自由を侵害することになります。
こうした性質をもつ「国葬」に対して、門川大作京都市長は、国葬当日に市役所本庁舎に半旗を掲げ、弔意を示すことを表明しました。本庁舎への半旗掲揚は、京都市民を代表して弔意を示すという意味合いでもあります。「国葬」を自治体として追認し、事実上市民に「弔意」を強要することになり、行政への信頼を損ねると同時に、今後の行政運営にも支障をきたすことになりかねません。
あわせて、職場における「黙とう」などにより、職員にも「弔意」を求められることが懸念されます。
京都市職労は、9月16日に緊急申し入れを行い、半旗掲揚の中止、弔意を強制しないよう求めました。
当局からは「勤務条件に係る申入れとしてお受けした。関係課からは『黙とう』は実施しないと聞いている」とコメントがありました。
<申入れ項目>
- 「国葬」に際しての本庁舎の半旗掲揚は中止すること。
- 職員に対し「弔意」を強制しないことはもとより、職場での「黙とう」など、「弔意」を求められていると感じざるを得ない状況や自身の意見と異なるために対応に悩むような状況を生み出す行為は行わないこと。
- 「国葬」や「弔意」に反対し、職場での「黙とう」などに従わなかったことを理由とした不利益取り扱いをしないこと。