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2023年02月21日

【北陸新幹線延伸問題】巨額の事業費、自治体負担重く

北陸新幹線延伸計画をめぐっては、2023年当初からの着工が見送られ、資材の高騰による建設費の増加や工事の長期化など様々な懸念も広がっています。

今回は、膨大な建設費用に関する問題点を掘り下げます。


膨れ上がる工事費
多額の税金投入

北陸新幹線延伸計画は、福井県敦賀市から、京都市内を通り新大阪駅までをつなぐルートです。

延伸区間の約8割はトンネルで、京都の市街地も地下深くのトンネルによって京都駅まで縦断します。

現時点で事業費は、約2兆1000億円かかるといわれていますが、資材価格が高騰しており「現在は4兆円以上かかる」とも言われています。

実際、2030年度の開業を目指し工事が進む北海道新幹線の札幌延伸計画では、資材価格の高騰と追加工事の発生などで当初約1兆6700億円と見込んでいた事業費が、2兆3145億円まで増加することが明らかになっています。

追加費用をどこが負担するかが焦点となっていて、JR北海道が支払う貸付料(開業後にJRが支払う線路使用料)を増やして、自治体の追加費用を抑える案などが検討されていますが、その案では新幹線の特急料金の引き上げにつながる可能性があり、開業後の利用者数にも影響しかねない大きな問題となっています。

全国新幹線鉄道整備法では、工事経費は「JRが鉄道運輸機構に支払う貸付料を除いた額を、国と都道府県が2:1の割合で負担すること」とされています。

京都市議会でも、事業費負担に関する議員からの質問に「地方自治体に対する負担を極小化することを、国に対して要望してきている」と京都市は答弁していますが、現時点で具体的な負担額など決まっていないものの、負担がないわけではなく、工事の規模から見てもかなり高額で、工事着工後にさらに増額することも予想されます。

この計画が巨額な税金を投じた工事になることは明白です。

 

駅前開発は
全額が自治体負担

事業に関わる費用は、新幹線の工事だけではありません。全国で行われている新幹線計画を見ても駅周辺の開発に伴う費用が発生しています。

新駅ができる地域では、駅前周辺の開発で地域の活性化を目指しますが、そこで発生する費用は、都市計画事業として実施されるため、すべて自治体負担となります。

JR東海が2027年開通予定で進めているリニア中央新幹線計画では、ルート上に4つの駅が新たにできます。

「神奈川県駅」ができる相模原市では、新駅につながる新たな道路整備を行う必要が発生し、その道路工事のために周辺住民が立ち退きを迫られる問題まで起こっています。

北陸新幹線延伸計画でも、当初はなかった南丹市美山町周辺に新駅をつくる案が急浮上しています。新駅ができることになれば、南丹市にも予定もしていなかった負担金が発生します。2月9日に南丹市の西村良平市長は「南丹市に負担金が及び、市がつぶれてしまう」と否定的な見解を示しました。

国主導で進められる新幹線計画は、開示される情報が少なく、沿線住民や自治体がその内容に納得できなくても、変更の余地がありません。

そのことは、工事経費も同じことで、動き始めてしまえば自治体負担額が予定を超過したとしても、負担しない選択肢はありません。

京都新聞社が昨年4月に行った府民世論調査では、「延伸推進」が3割に届かず、「再検討すべき」「不要なので中止すべき」が合わせて6割という結果でした。

いま京都市は財政難を理由に福祉の切り捨てや改悪で、市民に負担増を押し付けています。その中で、さらに負担増になりかねないこの延伸計画に理解が得られるのでしょうか。