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2016年02月15日

【ザ・しょくば】2016.2.11

 下鴨神社におけるマンション等建設を契機に世界遺産の保全のあり方が問われている。世界遺産周辺の厳かな環境を守るべき、世界遺産の中核となる建物の維持費用の捻出のためには必要不可欠、どちらも正論である。▼世界遺産の保全の主体は、その所有者はもちろん、世界遺産を暮らしの一部として受け入れ文化的に支えてきた市民、先人の築き上げた歴史を未来へ引き継ぐ行政など多様で、これら主体のひとつでもその責務を放棄すれば世界遺産の価値は失われるだろう。▼世界遺産の価値を保全するためには、その多様な主体が、世界遺産の価値やあり方、各主体が担う役割を共有し、それぞれが実行することが重要だ。マンション等建設の是非に白黒を付けるのが重要なのではない。そのために求められるのは、計画に至る検討プロセスの透明性の確保、市民の理解を得るための丁寧な合意形成プロセスである。▼しかし現在、市民の十分な理解を得ないままにマンション等建設のための手続きが先行している。当然のことながら、この手続きには公務員が携わっている。「市民のための仕事がしたい」(補足ながら、この「市民」には、住民や地権者、法人、事業者などを幅広く含むもので、〝市民VS〇〇〟という対立構図ではない)という入庁当時に誰もが抱く普遍の原理を、自己の思いだけでは「初志貫徹」できない組織は、もしかしたらブラックなのかもしれない。(颯吉)