ちょうさほうこく綴

京都市財政研究プロジェクト


 本稿は、京都市職労が(社)京都自治体問題研究所へ委託研究として依頼した研究論文です。主査は平岡和久先生(立命館大学教授・政策科学部)です。

京都市財政の現状と未来まちづくりプランの評価について                     2009年3月

はじめに
 京都市は2008年7月、「京都未来まちづくりプラン(骨子)」を公表し、そのなかで、このままでは2011年度までの3年間で964億円もの財源不足が生じ、実質赤字比率が財政再生基準を超過することを明らかにした。そのうえでプラン(骨子)の内容は、市長のマニフェスト実現を中心とした政策推進プランと行財政改革プランの両方を含むものであった。端的にいえば、未来づくりプランの目的は、財政破たんを回避しながら市長のマニフェストを実現するというものである。
 その後、プラン(骨子)に対する市民の意見を求めたうえで、プラン(案)が12月に発表された。プラン(案)では、財源不足解消方策として、734億円分の方策と230億円の特別対策を掲げている。
 プラン(案)における財源不足解消方策やそのための行財政改革プランは、京都市行政と市民生活に重大な影響を与えるものであるが、その前提となる財政の分析や見通しについては、十分な説明がなされておらず、プランの枠組みについても検討すべき問題が大きい。2月に「行財政改革・創造プラン 実施計画編」が公表され、具体的な項目が明らかになったが、なお不透明な部分が大きい。
 本報告は政策推進プランの中身そのものの検討を課題とせず、行財政改革プランとその前提となる財政の現状を検討することを目的とする。なお、本報告での評価はデータの制約から中間的なものであり、今後、精査していく必要がある。その意味では本報告は問題提起であり、検討していただく素材として捉えてほしい。

1. 京都市財政の現状について

(1)実質収支の危機
 京都市財政の危機は大きく2つの要素からなる。第一は、一般会計等の実質収支の危機である。京都市は2004年度に財政健全化プランを策定し、2005年度から2008年度までの4年間で1645億円の財源不足の解消を図ることとし、歳出削減700億円、歳入確保145億円、暫定的な財源確保800億円を目標とした。財源不足の約半分は暫定的な財源対策でまかなっており、予算ベースでみれば、退職手当債発行や地下鉄東西線建設必要財源の平準化による財政負担の平準化で148億円、行革推進債・s財政健全化債発行により303億円、公債償還基金(減債基金)からの借入で288億円を確保した。
 これらの暫定的な財源対策は市が負うべき財政負担の「先送り」であることは共通しているが、それぞれの対策の位置づけは異なる。このうち退職手当債は、赤字地方債であることから本来的には発行すべきでないが、多くの退職者が集中する期間における退職手当による財政負担を年度間で平準化することを目的としており、その限りでは一定の根拠がある。行革推進債は、集中改革プラン等によって数値目標を決めて行政改革を推進し、財政健全化を取り組む自治体に認められる特例的な建設地方債(充当率の引き上げ分)であり、行革を「先食い」して建設事業を進めるための財源を確保する手段である。これも財政負担の先送りであることから臨時的な措置であることは言うまでもない。
 この中で特に問題なのは公債償還基金からの借入である。この288億円は満期一括償還の市場公募債の償還費の財源であるため、いずれ返済しなければならない。また、財政健全化プランの最終年度である2008年度においても公債償還基金から50億円を借り入れており、その分だけ財政健全化の課題が残っていたことになる。
 ここで正確に見極めなければならないのは公債償還基金からの借入の限界をどのように評価するかである。10年債についての一般的な方式は3年据え置き、4年目から7年間に6%均等額を減債基金に積み立て、満期時に42%分を償還し、残額について借換債を発行してまかなうものである。京都市の場合、市場公募債の満期一括償還について独自のルールで運用している。国は2006年度からの実質公債費比率の導入に伴い、公債償還基金への積立の新ルールを設定したがそれとも異なる(あくまで理論積立であり、実際の積立は理論積立額と異なることは許されるが、実際の積立額が理論積立額に満たない場合、その分が実質公債費比率の算定上加算され、比率が上昇する)。30年償還に合わせて全額を積み立てるという基本原則は国基準と同様であるが、国基準の場合、市債発行額の3.3%均等額を毎年度積み立てるのに対して、京都市の場合、5年間据え置き、その後の25年間で毎年度4%均等額を積み立てることになっている(資料1参照)。

資料1

出所:京都市理財局資料

 市場公募債の種類は5年債、10年債、20年債、及び30年債であり、満期の場合の借換は、それまで積み立てた額を取り崩して償還し、残額を借り換え、すべて30年で償還するという方式をとる。大阪府のように借換増発は行っていない。京都市の特徴としては、最も多用される10年債の新発債の場合、一般的な方式では借換が58%、実質公債費比率の国ルールでは67%であるのに対して、80%を借り替えることになる。さらに1回目の借換債では満期時にその半分を借り換え、2回目の借換債は満期時に借り換えをせず、全額償還が完了する。
 公債償還基金からの借入は緊急措置であり、本来の健全な財政運営からみると問題であるが、資金繰りという点からみると、ある程度の新発債が継続的に発行されることを前提とすれば、ある程度までの額であれば持続可能である。京都市主計課資料によると、公債償還基金残高は2006年度末に670億円と減少した後は増加を続け、2013年度末には1327億円に達する。2008年度までの公債償還基金からの借入額が288億円であることから、さらに数百億円を借り入れることは可能である(資料2参照)。その意味で、プラン(案)が「もはや、こうしたやりくりは限界にあり・・・」としていることには、一定の留保が必要である。市民生活を守るためにどうしても必要な財源を確保する必要があれば、「緊急措置」として公債償還基金からの借入を選択肢に入れることをはじめから排除すべきではない。

 次に実質収支悪化の要因を検討しなければならない。その本格的な検討は今後の課題となるが、ここでは「戦略的予算編成システム」における歳出増要因に注目したい。戦略的予算編成システムは2004年度予算から実施されている方式であり、予算を「政策重点化枠」(全市的観点から局横断的な予算配分)と「局配分枠」(配分された財源の範囲で各局が予算を編成)に大きく2つに区分し、一件査定を行わず、財源枠を局ごとに配分する方式をとっている。局配分枠はさらに「義務費等枠」(法定義務経費、職員給与費、公債費など)と「局裁量枠」(自治体の裁量で経費の節減が可能な事務事業分)に区分される。財源配分は一般財源等をベースに行われる(資料3参照)。

 

資料3 戦略的予算編成システムのイメージ

出所:京都市理財局資料

 プラン(骨子)において示された、一般会計における2009年度から2011年度までの3年間の財政収支見通しによれば、何らの対策もとらない場合、局配分枠は2008年度予算を基点とすれば142億円増とされており、そのうち義務費等枠は75億円増(うち公債費55億円増)、局裁量枠は67億円増(うち「その他裁量的経費」64億円増)と推計されている。「その他裁量経費」はなぜ増加するのであろうか。それは「政策重点化枠」との関連で説明されうる。毎年度40億円の政策重点枠は新規・充実事業に対する財源枠であるが、それには次年度以降も財源が必要となる。そこで次年度以降の財源を局配分枠における「その他裁量経費」で計上することになる。今回のプラン(骨子)では政策重点化枠の後年度負担についてこれまでの実績をもとに見込んだのである。一般財源等が減少傾向にある時に、歳出増の仕組みが予算編成システム上組み込まれていることは、当然に財政収支悪化につながることになる。このことは、戦略的予算編成システムを見直す必要性を示すものである。
(2)連結実質収支の危機
 第二は、全会計を通じた連結実質収支の危機(特に地下鉄問題)である。2007年度決算における連結実質赤字比率は政令市で唯一の赤字である10.45であった。その要因となったのは地下鉄、バス、国保であり、特に地下鉄の不良債務(資金不足)が影響している。2007年度決算における資金不足額は地下鉄事業が291億円、バス事業が120億円であり、国保の実質赤字は104億円である。京都市の標準財政規模が3422億円であるため、これら3会計は連結実質赤字比率をマイナス15%分悪化させる要因となっている。このうち地下鉄事業の不良債務は今後も増大することが見込まれており、他の会計における収支が変わらないとすれば、2014年度には地下鉄事業の不良債務が522億円となり、連結実質赤字比率は早期健全化基準(16.25)を上回り、2018年度には地下鉄事業の不良債務が944億円となり、連結実質赤字比率が財政再生基準(30%)を上回ることになる(解消可能赤字額がない場合)(資料4参照)。地下鉄事業の不良債務のピークは2042年度で3426億円が見込まれており、解消可能赤字額が算入されなければ連結実質赤字比率は100%に達する。

資料4 地下鉄事業における不良債務(資金不足額)の見通し(健全化策実施前ベース)

出所:京都市理財局資料

 以上のことから、京都市においては一般会計等とともに、公営企業の経営健全化が喫緊の課題となっている。ただし、地下鉄事業においては、巨額の投資を長期債務でまかない、数十年間かかって収支相償させることが事業の性格から予定されており、不良債務が生じることは当初から織り込み済みであった。問題は解消可能赤字額がどう見積もられるかということであり、それによって解消すべき不良債務が決まってくる。この点を含めた詳細な検討が求められる。

2. 京都未来まちづくりプランにおける財政収支見通しの検討

(1)財政収支見通しと改革プランの枠組み
 これまで京都市は1995年度から継続的に3年間から5年間の期間を区切った行財政改革を進めてきた。直近では2004年度から2008年度までの財政健全化プランを進めてきたが、それにもかかわらず、最終年度の2008年度においても財源不足が148億円生じており、それに対して退職手当債発行65億円、特別の財源対策83億円(行革推進債33億円、公債償還基金からの借入50億円)で対応した。
 今回のプラン(骨子)においては、2009年度から2011年度の3年間で964億円の財源不足となり、2011年度には財政再生団体になるという推計を行った(資料5参照)。
 財政収支の推計における第一の問題点は、何も対策を打たない前提の試算だけを提供していることである。「なりゆき」の試算を示すだけでなく、少なくとも事前に複数の手段と選択肢を示して、どういう対策を行うことでどの程度の財源対策になるかが示されなければならない。特に、これまでも財源対策として実施してきた退職手当債や行革推進債をいっさい活用しないことを前提に推計しているが、個々の緊急の財源対策手段の採用の是非をともかく、これらを活用した場合にどの程度の財源が確保されるかが示されなければならない。活用できる対策を選択肢として示さず、財源不足を大きくみせることによって、財政再生団体になる危機を煽ることは、市民による適切な現状認識を歪めるものである。
 第二の問題点は、財政収支の見通しが3年間分しか示されていないことである。これでは市長の公約を実現するための当面3年間のみ財源を確保すればよいという枠組みとうけとられかねない。行財政の改革においては、住民に対して、現時点における中・長期的な財政見通しの提示が必要である。先のことはわからないというのは、中・長期的財政見通しの提示を否定する理由にならない。前提条件をすべて提示すれば説明責任は果たせるからである。
 第三に、財政収支見通しの前提条件の詳細を示していないことである。プラン(骨子)では一般財源収入等の見込み方や財源配分の見込み方の概要が示されているが、基本的な考え方のみが示されているにすぎず、市民が各項目の数値の根拠をトレースすることは不可能である。

資料5 京都市一般会計における財政収支の見通し(予算ベース)

出所:「京都未来づくりプラン(案)」

(2)財源不足の解消方策と行財政改革プランについて
 プラン(案)では、964億円の財源不足に対する解消方策をとりまとめた。その内訳は大きくは行財政改革・創造プランの取り組みとして734億円、特別の対策として230億円に分かれる。まず行財政改革・創造プランについては、[1]人件費の削減で170億円、[2]事務事業の見直し、投資的経費の抑制及び公営企業に対する繰出金の削減で200億円、[3]政策経費の圧縮で20億円、[4]市税徴収率の向上、保有財産の売却で140億円、[5]退職手当債の活用で204億円となっている。特別の対策の内訳は明示されていないが、緊急の人件費抑制策、行政改革推進債の発行を検討するとなっている(資料6参照)。
 このうち[1]人件費の削減については、その内訳は1000人の職員削減によって110億円が担保されるが、残りの60億円については、1000人を超える追加的な職員削減で担保しなければならず、めどがたっていない(主計課へのヒアリングによれば、追加的な300人の職員削減により30億円、手当て等の削減により30億円を見積もっているが枠による設定であり、必ずしも積み上げによる目処がついているわけではない)。[2]の200億円分の経費削減については、積み上げにより確保しなければならないが、その内訳は明らかでない(主計課へのヒアリングによれば、事務事業見直し110億円、投資的経費の抑制60億円、公営企業に対する繰出金の縮減30億円を見積もっているが、これも枠で設定しているものである。このうち投資的経費の抑制は投資的経費を2割縮減した場合の一般財源相当額であり、公営企業に対する繰出金の縮減については、市立病院への任意繰出の半減、市バス事業への繰出金削減などを積み上げている)。[3]政策経費の圧縮については政策推進枠40億円を36億円に1割圧縮することで達成される。[4]については土地の売却が主要なものとなる(主計課へのヒアリングによれば、その内訳は、市税徴収率等の向上16億円、保有資産の売却124億円と見積もられている。実施計画において市税徴収率は毎年度0.1%向上で設定しているが、不況の影響が懸念され、保有資産の売却は買い手がつくかどうかに不確実性がある)。[5]退職手当債は職員定数の削減による将来の財政効果の範囲内で発行が認められるものであり、職員削減による臨時的な財政負担を後年度に平準化するものである(発行可能額は、退職手当支出見込み額のうち前年度の給料の12%を超える額を限度としており、主計課ヒアリングによれば発行可能額を見込んでいる)。
 また、特別の対策における内訳は明示されていないが、新聞報道によれば、緊急の人件費抑制策(給与カット)で50億円、行革推進債で180億円となっている(日経新聞、08年12月3日付、近畿経済・京滋面、参照)(主計課ヒアリングによれば、緊急の人件費抑制策50億円の内訳は給与カット40億円、厚生会事業主負担の凍結10億円であり、行革推進債の活用180億円である)。
 以上のように、財源不足の解消方策の積算は不透明な部分が多く、説明責任という点できわめて問題が大きい。

資料6 京都市の行財政改革・創造プランにおける財源不足解消策の内訳

出所:「京都未来づくりプラン(案)」

 財源不足の解消方策を担保するのが行財政改革プランとして位置づけられている。行財政改革プランでは一般会計における財源不足解消の目標とともに、以下の方針、目標を設定している。
 [1]「未来まちづくり推進枠」(政策推進枠)を毎年36億円の別枠で設定し、重点的な事業推進を図る。 
 [2]1000人を上回る職員数の削減(全市)を行う。
 [3]H21年度予算編成から公債償還基金に依存しない財政運営を行う。
 [4]公営企業、特別会計、外郭団体を含めた財政健全化を進め、
   連結実質赤字比率を早期健全化基準(16.25%)未満に抑制する。
 [5]市債残高の減少をめざした市債管理:現行水準から20%削減(600億円、一般会計)する。
 さらに具体的な行財政改革・創造の取り組みとして7つの推進項目と24の取り組み項目を設定している。
 こうした方針についてまず指摘しておかなければならないことは、このままでは財政再生団体転落になるという危機的状況を訴えているにも関わらず、市長のマニフェストの実現を中心とした政策推進プラン(総事業費3100億円)を盛り込むなど、緊急事態への対応の枠組みになっていないことである。緊急事態であれば、従来の戦略的予算編成システム自体の見直しも求められる。特に政策重点化枠は1割減額されたものの引き続き「未来まちづくり推進枠」として残っている。政策推進は具体的であるが、見直される経費については中身なしの骨子だけを示して、市民の意見を求めるという枠組みの妥当性が問われるのである。
 第二に、今回の行財政改革プランの主なターゲットは職員の大幅削減にあるとみてよいが、1000人を超える職員数の削減がもたらす影響について明らかにされていない。職員数削減は「事務事業の徹底した見直し」などによるとしているが、各部局における削減目標と、それが内部効率を高めることによるのか、サービス自体を廃止・縮減することによるのかなどが示されなければならない。
 第三に、「公債償還基金に依存しない財政運営」についても、市民生活を守る観点から見直す余地があることは、先に指摘したとおりである。
 第四に、連結実質赤字比率を早期健全化基準(16.25%)未満に抑制するという目標の積算根拠(会計ごとの目標値)がしめされなければならない。
 第五に、市債残高の減少をめざした市債管理については、市債発行額を20%抑制し、600億円水準にすることが打ち出されており、そのための投資的経費の抑制がポイントとなる。この点では、投資的経費の具体的な見直しがほとんど提示されていないのはきわめて不十分ではないか(「実施計画」では、南部クリーンセンター第二工場整備着手時期の見直しのみが打ち出されている)。
 第六に、歳出削減のために打ち出された、事務事業の見直しや公営企業に対する繰出金の削減などについては、その市民生活への影響について明らかにされなければならない。事務事業の見直しについては、民間保育所職員給与等改善制度や知的障害者更正施設等の運営補助などの見直しも盛り込まれており、市民的な論議が必要である。また、公営企業への繰出金の削減についても、受益者負担の強化につながるだけに十分な検討が必要である。また、市立病院への繰出金の削減(任意補助の半減化)については、その病院経営や地域医療への影響を明らかにする必要がある。
 第七に、受益者負担の引き上げについても、その根拠と市民への影響について明らかにしなければならない。
 第八に、公営企業・特別会計および外郭団体の改革については、別途検討されることになるが、これらの改革は一般会計とならんで重要であり、検討プロセスを透明化したうえで市民的な議論を保障する必要がある。
 以上のように、前段の「政策推進プラン」と比べて、財源不足解消方策と「行財政改革・創造プラン」の中身は十分に具体化されておらず、その市民生活への影響が明らかであるとは言いがたい。しかしながら財源不足解消目標額のスケールからみて、きわめて大きな影響が出ることが予想されるのであるから、これらのプランの実施計画レベルの素案を提示し、市民の議論に付さねば到底理解を得られることにならないであろう(2月に「実施計画」が提示されたが、予算案とほぼ同時期であり、十分に検討する期間があるとはいえない)。

3. 交通事業会計の実態と経営健全化計画案

(1) バス事業の現状
 バス事業の2007年度決算をみると、2003年度から5年連続で黒字であるが、累積損失△122億21百万円、不良債務△119億95百万円となっている。
 バス事業においては財政健全化法における解消可能赤字額はなく、資金不足=不良債務である。資金不足比率63.1%(2007年度)となっており、2008年度に大幅改善は無理であり、経営健全化団体になるのは必至である。ただし、今後は改善の見通しである。
 バス事業の場合、企業債は5年債であり、借り換えはない。税法上は7年償却であり、実際の耐用年数は14年を見込んでいる。
 これまでの経営健全化の取り組みとして、主に「管理の受委託」を拡大するとともに、給与表の見直しを実施してきた。市電撤去の際に大量採用した職員が2009年度にかけて退職時期を迎える。2008年度が退職金のピークであり、2009年度以降、退職金の減少が見込まれる。
 不況の影響は不明であるが、近場の旅行が増える可能性もあるため、必ずしもマイナス要因になるとは限らないと考えられる。

(2) バス事業における経営健全化計画案(骨子)
 京都市交通局は2008年12月、「京都市高速鉄道事業経営健全化計画案(骨子)」(以下、地下鉄経営健全化計画案(骨子))及び「京都市自動車運送事業経営健全化計画案(骨子)」(以下、市バス経営健全化計画案(骨子))を公表した。いずれも、これまでの「ルネッサンスプラン」の後継プランとして策定するものであるとともに、財政健全化法にもとづく計画と平仄をあわせるものと位置づけている。今後の予定としては、2009年9月以降、財政健全化法にもとづく個別外部監査をかけ、2010年2月市議会において計画を決定するというスケジュールが想定される。
 バス事業のプラン案(骨子)は、これまでの取り組みによって経営健全化に一定の目処がついたのを踏まえ(このままでもH29年度には経営健全化団体基準を下回る見通し)、さらに一般会計からの補助の削減を見込んで、いっそうの経営健全化を図ろうというものである。
 プラン案(骨子)では、一般会計からの補助金を5年間で39億円削減することとし(生活支援路線補助金の縮減、市バス購入費に対する補助金の縮減)、それに対して、総人件費の削減(60人以上の職員削減)、バス車両の耐用年数の大幅見直し(更新年数を14年から18年に延伸)、経費の削減(経常経費の5%削減)、定期観光バス事業からの撤退といったコスト削減策と、利用者数の拡大等による収入増加策(1日あたり利用客7000人増)を打ち出している。プラン実施により、H28年度時点で経営健全化団体基準を下回る見通しとなっている。
 このうち、利用客増は積み上げの根拠のない目標値であり、実績次第では収支見通しに一定の修正が必要となろう。ともあれ、市バス事業については経営健全化の目処がついているといってよい。ただし、職員削減等による総人件費抑制・民間委託の拡大がバス事業そのものに与える影響については見極める必要がある。

資料7 バス事業における不良債務(資金不足額)の見通し(健全化策実施前・実施後)


出所:京都市交通局資料

(3) 地下鉄事業の現状
 地下鉄事業は50年を超える長期間において収支を相償させる性格のものであり、東西線開業から11年しかたっていない現状において、巨額の企業債償還が必要であることから不良債務が拡大してきた。
 地下鉄事業の2007年度決算をみると、経常損益は△159億5百万円であり、減価償却前利益においても△54億19百万円と赤字になっている。累積欠損金2,898億72百万円、不良債務290億92百万円にものぼる。建設企業債は30年債であり、2008年度は企業債168億円の繰上償還・借換を実施する。
 資本平準化債をすでに活用しているため、累積償還・償却差額は出ない。また減価償却前利益がマイナスのため、解消可能赤字額はゼロである。そのため不良債務=資金不足額となっている。2007年度決算における資金不足比率は128.8%である。
 これまで「ルネッサンスプラン」等によって経営健全化に取り組んできており、新給与表導入などにより人件費の抑制、民間委託等によるコスト削減とともに、収入対策として、運賃の改定、「地下鉄事業経営健全化計画」策定にもとづく一般会計からの経営健全化債趣出資(10年間で640億円)などを実施してきた。なお、退職は2008年度がヤマであり、2007年度は41人が退職した。
 また、(株)京都高速鉄道への路線使用料問題(御陵―三条京阪)(55億円)が経営悪化の要因の一つであったが、2008年9月議会で第三セクター解消を決定(3セク債務を公営企業が引き受け)したことから(*これまでは、1300億円の3セクの債務償還に対して、1900億円の線路使用料が必要という枠組み)、公営企業がダイレクトに償還することで、法人税負担分を軽減し、さらに資本平準化債を利用可能になるという。
 こうした取り組みによっても、先にみたように、今後はさらに不良債務(資金不足額)が増大する見通しとなっている。そのため、2009年9月以降、財政健全化法にもとづく経営健全化計画を策定することになる。

(4)地下鉄事業における経営健全化計画案(骨子)をめぐって
 経営健全化計画案(骨子)は、まずH22年度には減価償却前損益の黒字化をめざし、以後も黒字基調を維持して不良債務の増加を抑制することをめざす。そのため、収入増加策として、[1]H30年度までに一日あたり5万人の利用客増をめざす、[2]駅ナカビジネスの拡大、[3]運賃の改訂(5年ごとに5%アップ)などを打ち出し、コスト削減策として、[1]100人以上の職員削減等による総人件費の抑制、[2]地下鉄設備の更新期間の延長、[3]経費の削減、[4]高金利企業債の借換等による利息負担の軽減、に取り組むとしている。
 こうした取り組みを行ったとしても不良債務は増大する見通しである。国の制度に関連した改善策としては、先にみた3セク区間の直営化に伴う一般会計からの新たな出資(15年間で総額180億円)についてはすでに目処がたっている。
 最も問題なのはH26年度以降の経営健全化債出資の継続の如何である。この点は国の制度の継続がきわめて重要である。その他に高金利企業債の借換制度の拡充やトンネルの減価償却期間の延長なども課題となる。
 地下鉄事業における財政健全化法の基準に対する見通しはきわめて不透明である。それは特に経営健全化債出資の見通しと解消可能赤字額の見通しが不透明であることに起因する。さらに一日5万人の利用客増を実現する手立てについてもハードルは高いといえよう。また、職員削減等による総人件費抑制・民間委託の拡大が地下鉄事業そのものに与える影響についても見極める必要がある。

資料8 地下鉄事業における不良債務(資金不足額)の見通し(健全化策実施後)

出所:京都市交通局資料

資料9 地下鉄事業における不良債務(資金不足額)の長期見通し

出所:京都市交通局資料

4.京都市財政再建論議の方向性

 「未来づくりプラン」は、当然考慮されるべき対策を含めた複数の試算を示すなどといった市民との適切な情報共有を行うことなしに、巨額の「財源不足」を示すことで市民を脅し、そのうえで具体的でない財源不足解消方策や行革プランを示して、十分な市民の検討を抜きに2009年度予算で具体化するというプロセスをとっている。
 こうしたプランの中身とプロセスは根本的に見直されなければならない。その場合、少なくとも以下の点を考慮する必要があろう。
 (1)市民的論議の前提となる財政の現状についての詳細な情報の提供と、市民による分析を保障すること。特に経済情勢の悪化という環境のもとで、市行政の役割が求められる状況にあり、公債償還基金の活用を含めて検討すること。
 (2)市民的論議の前提となる財源不足解消方策と行財政改革プランについて、その項目ごとの積算を含む詳細な情報の提供を行い、市民による議論を保障すること。
 (3)政策推進プランを聖域化することなく、既存の事務事業と同様に評価し、優先順位を議論できる素材を提供すること。戦略的予算編成システムそのものも見直すこと。
 (4)公営企業・特別会計および外郭団体の改革については、個々の改革ごとに市民的な検討を保障すること。


以上  
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