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2018年01月10日

市職労新聞新年号 新春対談 核兵器のない世界へ 市民の運動がつくりだす新しい時代

【新年号企画】
核兵器のない世界へ 市民の運動がつくりだす新しい時代

 昨年7月、歴史上初めて核兵器を違法とする、核兵器禁止条約が制定されました。国連の3分の2を占める122カ国が賛成。被爆者が先頭に立ち、市民の運動が新しい時代をきりひらいています。核兵器禁止条約の制定に貢献したことが評価され、ICAN(国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」)がノーベル平和賞に選ばれました。ICANの国際運営委員をつとめる川崎哲さんと、被爆者として先頭に立って運動をすすめてきた花垣ルミさん、青年部常任委員の髙橋怜花さん、女性部長の藤本晴美さんが対談しました。(文責・編集部)

国際機関や大統領ではなく、市民運動の受賞

髙橋 核兵器禁止条約の採択に貢献されたということでノーベル平和賞を受賞されて、私たちも大変嬉しく思います。あらためておめでとうございます!私も青年部で活動するなかで、昨年の原水爆禁止世界大会に参加して、「さぁ、ここからだ!核兵器の禁止から核兵器の廃絶へさらに歩みを進めよう!」という会場の熱気や、何より花垣さんのように被爆者の方々が先頭に立って声を上げてこられたことが実ったものだと思いました。花垣さんには、世界大会当日に直接お話を伺えたことは忘れられません。

 

川崎 ありがとうございます。しかしこれはICANという運動全体に対する賞です。核兵器の廃絶を願ってずっと活動されてきた方や、広島や長崎の被爆者の方々が先頭に立ち、条約実現の道を切り開いてこられました。二度と悲劇を繰り返してはならないという思いが、大きな国際世論になり、みなさんが切り開かれた道の後ろに、多くの運動や市民団体、NGOが続いてきたということですから、この受賞はみんなでお祝いをして、おめでとうと言い合いたいのです。

花垣 被爆者として核廃絶に向けて、頑張ってきて本当に良かったと心から思っています。世界大会では市職労青年部につかまっちゃって、ホテルのロビーでお話ししましたね(笑)。でも、無制限な時間帯でしゃべることが大事なんですよ。カチッとした被爆証言じゃなくて、戦後の生活のいきさつや原爆のあとの子ども時代のこととか、遊び方とか、決められた時間だけでは出せない思いなどが出せるんです。

髙橋 私と同世代の若者のなかで、核兵器廃絶や戦争に関して学ぶ機会や、直接触れて感じる機会が少なく、関心を持っている若者が少ないと感じます。花垣さんや被爆者の方のお話を聞けたことは貴重な経験になりました。

川崎 核兵器廃絶は、ノーベル平和賞の歴史のなかで、繰り返し平和賞の対象となってきました。IAEAという国際機関や、オバマ大統領が受賞されていますが、今回は、市民運動の受賞となったことが特徴的です。ICANには101カ国、468団体が参加しています。多様な人たちが核兵器禁止条約の実現という一つの運動を作り出してきたことが評価されたということですから、この条約をもっと育てて大きく前に進めようというメッセージが込められていると思っています。

憲法9条と核兵器廃絶をセットに

髙橋 7月7日に条約が採択された時、市民社会の運動とともに世界が大きく動き出していると思いました。私と同世代の若い世代の人たちにも関心が広がり「核兵器をなくそう」という声が高まったら、日本政府の態度も変わるのではないかとも思います。

川崎 7月7日は、私も現場にいましたが、その時の興奮は忘れられません。この条約は、核兵器の使用、開発、実験、製造、保有のほか、核抑止力の根幹である「威嚇」も禁じました。「自衛のためならいい」など、法的な文書には例外がつくられることがありますが、例外なく完全禁止ですから非常に大きなことです。現時点(12月11日)では56カ国が署名していますが、さらに伸ばしていこうという状況がつくられています。
第二次世界大戦後に国連がつくられ、二度と悲惨な戦争を繰り返してはならないと国連憲章ができました。1946年の国連総会の最初の決議は核兵器廃絶を求めるというもの。戦争を繰り返させないことと核兵器廃絶をセットに考えていくことは、大切なことです。戦争の行き着く先に、広島・長崎の原爆投下があったことを世界が学んだのです。それから72年経って、禁止条約ができました。条約ができたからといって、すぐに核兵器はゼロにはなりません。ようやくスタート地点に立ったのです。

藤本 日本政府は被爆者の方々の思いに反して、核兵器禁止条約に署名をしていませんね。戦時中に自治体が行ってきたことは住民を戦争に駆り出して、動員し、残った住民を戦時体制に組み込むという役割を担った歴史があります。その反省の下で、「二度と住民を戦争に駆り立てない、二度と赤紙は配らない」ということを運動につなげていくことが、自治体労働組合運動の原点であると思います。いま、「日本国憲法を変える」「憲法9条を変える」という動きがあるなかで、憲法をどうやって遵守し、住民生活を守っていく役割をはたしていくのか、日本政府の姿勢とともに、私たち自治体労働者としても大きく問われています。

川崎 戦争を二度と繰り返させないということと核兵器廃絶をセットに考えることは、日本では憲法9条と核兵器廃絶をセットに、不可分のものとして、戦後日本の出発点にしてきたことと重なります。しかし残念なことに、国連加盟国の3分の2が核兵器禁止条約に賛成を表明しているのに、日本は署名せず少数派に入っている。世界の人々が、核兵器は未来永劫、持たない、つくらないと決めたときに、少数意見を提示している。日本政府が言っていることは「核兵器の全面禁止には反対。北朝鮮の核は禁止してもいいが、アメリカの核は禁止しては困る」と。それが日本の安全だという理屈を掲げて、非常に頑なに、だんだんと主張を強くしています。アメリカの核兵器がなければ日本の平和は守れないという主張ですが、そもそも核兵器の使用は、取り返しのつかない被害を人間にもたらし、環境を破壊するものであるということ。仮に北朝鮮が発射しても、アメリカが発射しても、あるいはどこかのテログループであったとしても、また事故で爆発しても、人類や地球環境に壊滅的な被害をもたらします。だから、誰にとっても許される被害ではない。これが「核の非人道性」と言われる基本的な考え方です。このことを本来言わなければならないのは日本です。その先頭に立ったのは被爆者のみなさんでした。私もピースボートとして被爆者の方々と一緒に訴えてきました。ICANの世界中の仲間たちも活動してきた結果、禁止条約に「ヒバクシャ」の言葉が書かれることになったのです。ところが日本政府はというと、いまだに「核は必要」というのです。

被爆者の願い裏切り世界の流れから孤立

花垣 7月7日の国連での条約採択のニュースが流れたとき、たくさんの人からメールが届き、涙が止まりませんでした。「ヒバクシャ」という言葉が条約に明記され、被爆者に思いを寄せた文言を読み、生きていてよかったと思いました。でも、日本政府の姿勢は、被爆者の願いを裏切り、世界の流れから孤立しています。唯一の被爆国である国の国民として恥ずかしい限りです。

川崎 日本が核廃絶に後ろ向きであることと、憲法改悪の問題は関係していると思います。憲法9条を変えて、戦争を可能にする道筋がつくられると、核保有国による核兵器使用も辞さないということになります。第二次世界大戦の反省は何だったのか。戦争を体験されて苦しまれてきた方々がうかばれないし、だから二度と繰り返させてはならないと被爆者の方々が訴えてきたのに。
日本の動きに世界は注目していると思います。アメリカの核の傘の下にある国で、揺れ動いている国がいくつもありますが、日本もその一つで、日本政府の動きと市民の核兵器廃絶の願いは大きく食い違っています。

藤本 花垣さんは自治体に対してもヒバクシャ国際署名を要請されていますね。

花垣 京都市長も「署名の文面を素直に読んで署名した」と述べています。

藤本 平和賞の受賞に際して、こうした自治体からの激励や賛同のコメントなどはありますか?自治体としてできることとは。

川崎 昨年の8月に、長崎で「平和首長会議」の総会が開催されました。「平和首長会議」は全世界から市町村の代表が参加されますが、現在(12月11日)、162カ国で7514の都市が加盟しています。日本では1741の地方自治体のうち、1708の首長が参加しています。その首長会議で決議がありました。その内容は、「全加盟都市は、必ず『核兵器禁止条約の批准』を求める運動をそれぞれがやる」というもの。その決議に従うなら、日本では1600を超える市町村が立ち上がらなければならないんですよ。
一方、「ヒバクシャ国際署名」に署名をされた首長は969自治体です。過半数の首長が署名をされたということですが、「平和首長会議」に加盟しておられる首長でもまだ署名されていない方も結構おられます。
首長が「はい、署名します」というだけではなくて、積極的にステートメントを出すとか、地方議会で核兵器禁止条約の批准を求める採択ができれば、日本政府としても無視できない状況が作り出せると思います。ICANの国際的な運動とともに、自治体の動きと連動させて、少なくとも日本政府に「核兵器禁止条約に署名をする方向で頑張る」と言わせるところまでは持っていきたいですね。

世界は私たちの運動に期待を寄せている

花垣 京都では7月15日に「ヒバクシャ署名京都の会」を京都原水爆被災者懇談会、京都「被爆2世・3世の会」、京都府生活協同組合連合会、原水爆禁止京都協議会の呼びかけで結成し、50万人を目標に署名に取り組んでいます。毎年、京都府内の自治体へ被爆者援護や核廃絶、脱原発の訴えにも回っています。

川崎 京都府内では、11自治体(12月)の首長からヒバクシャ国際署名の署名をいただきました。市民運動や労働組合としても大いに取り組んでいただきたいです。
核兵器禁止条約をすすめるうえで、自治体には二つの枠組みがあります。国際的な枠組みでの「平和首長会議」(1982年設立)と、もう一つは日本での非核宣言自治体の枠組みの「日本非核宣言自治体協議会」(1984年設立)です。非核宣言運動は、1980年代にグッと伸びた運動ですが、最近は「さて何をやろうか」と停滞しています。核兵器禁止条約やICANのノーベル平和賞受賞など、新しい変化がありますから、「宣言自治体が平和の事業をやりましょう」というプロジェクトを立ち上げて、先進例を広げていってほしいと願っています。
日本政府の対応は非常に残念ですが、世界からは日本には根強い核兵器廃絶の世論があるということが知られています。世界が、私たちの運動に対して「もっとがんばれ」って期待を寄せています。
憲法9条を守り、核兵器のない世界の実現へ向けて、世論を盛り上げ、一緒にがんばりましょう。

藤本 母の兄弟は、戦争で亡くなっていて、母は「自分だけが残った」と言っていました。戦争の記憶は子どものときの記憶ですが、「とにかく食べ物がなかった」と聞かされていました。二度と戦争は繰り返してはならないし、私たち女性部も「二度と赤紙は配らない」という思いで宣伝などにも取り組んできました。一緒にがんばりましょう。ありがとうございました。

髙橋 どうやったら平和の問題に、もっと若い人たちが関心を持ってもらえるか、青年部でもみんなで話し合っていきたいですし、百聞は一見にしかずで、実際に現地に行って感じとることもあります。一緒に平和の活動に参加してくれる青年を増やしていきたいし、職場の仲間にも話していきたいと思いました。ありがとうございました。