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2021年08月11日

デジタル法案と 自治体デジタル化のここが問題!③

デジタル法案と自治体デジタル化のここが問題!③
その2
標準化の押し付けにより、自治体独自の公共サービスが維持できなくなるおそれがある

『地方公共団体情報システムの標準化に関する法律案』は、「地方公共団体情報システムは、標準化基準に適合するものでなければならない」と定めています。

「自治体クラウド」(注)を推進し、独自の仕様変更を行うことは原則禁止のため、自治体独自の公共サービスを実施することは極めて困難になります。

「自治体クラウド」のもとで、コストがかかることを理由に、独自の住民サービスを放棄する自治体の事例がすでに報告されています。

富山県上市町は、3人目の子どもの国保税の免除など、独自の施策が議会で提案されましたが、仕様変更に経済的・事務的コストがかかること等を理由に町長が実施を拒否しました。

自治体DX推進計画では、「自治体の取り組みを支援する」としながら、経費支援の対象は「標準準拠システムへの移行」のみです。既存のシステムの解約や違約金支払いにかかる経費、仕様変更にかかる経費について、全額が自治体負担となるおそれがあり、デジタル化のための財政負担は深刻です。

国による標準化の押し付けは、住民の福祉の向上の観点から、各自治体が独自の施策や住民サービスを行うことを極めて困難にし、さらには、現在ある独自の住民サービスを後退させるおそれがあります。

これまで各自治体では、子どもの医療費無償化や税・国保料・介護保険料の独自減免、学校給食の無償化など、地域の特性や住民のニーズに対応した独自の公共サービスを実施してきた歴史があります。

地方自治法では、国が、自治事務に関して法令で定める場合であっても、地方公共団体の裁量や選択の余地を確保し、自主性・自律性を発揮し自治事務を行えるよう国に「特に配慮すること」を義務として定めています。

福祉切り捨ての標準化ではなく、地域住民のニーズを生かし、地方自治の本旨に基づく制度設計や国による財政支援を、住民とともに自治体全体で求めていく必要があります。

(注)住民基本台帳など、行政に関するデータや情報システムを、外部のデータセンターを活用し、複数の地方公共団体で共有し管理・運営するシステムのこと。