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2022年06月03日

「いのち守る33キャンペーン」スタート ~時間外勤務に上限を~

京都・大阪共同で長時間労働解消に向けた署名スタート
~労基法33条・時間外勤務に上限を~

保健所職員をはじめ公務で働く職員の長時間労働の解消に向けた「いのち守る33(さんさん)キャンペーン」がスタートしました。

5月15日「いのち守る33キャンペーン署名スタート集会」(オンライン)は、全国から、保健師など自治体で働く仲間、市民など97人が参加。

現場からリアルな実態が報告され、キャンペーンの成功に向けて思いを共有しました。


「公務だから」青天井の長時間労働許されない

15日のスタート集会では、京都市職労の永戸有子中央執行委員長が、退職をした保健師の仲間について触れてスピーチしました。

「彼女は、初めての緊急事態宣言が出された一昨年4月から1年間、新型コロナの対応部署で働いていました。残業時間は月100時間は当たり前で、200時間を超える時も。いつ死んでもおかしくないと思っていたこと、朝ちゃんと目が覚めるかと不安になりながら寝る毎日だったこと。彼女の口から語られる話は衝撃的で、頭を殴られるような思いでした。行政保健師として市民のために働きたいと京都市に就職した彼女が『死ぬか辞めるか』と悩み、退職を選ばざるをえなかった状況をなんとしても変えたい」

「公務だからといつまでも青天井の労働時間が許されるのはおかしい」

とキャンペーンに至る思いを語りました。

時間外勤務に上限規制、自治体職員の増員を

集会では、大阪府職労、京都府職労連、京都市職労の仲間から、リアルな実体験とともにキャンペーンの成功への思いを込めた報告がありました。

京都市保健所の本体職員の時間外勤務は、今年第6波のもと、1月は平均で83時間、2月は77時間と過労死ラインを超え、職員の半数で年間720時間超えの超勤がありました。現在も応援職員約170人が入り対応しています。

長時間労働は、保健所の職員に限らず本庁職場でも深刻です。多くの自治体職員は、辞令一本でこのような部署に配属されます。

労働基準法第33条では、災害や公務のための臨時の必要がある場合、際限なく働かされることが定められています。そのため、市保健所で一昨年度、年1500時間を超える時間外労働を生み出しましたが、市長以下、誰も責任が問われていません。

「いのち守る33(さんさん)キャンペーン」では、「33万筆」を目標にしたオンライン署名の成功とともに、労基法33条にもとづく時間外勤務に上限規制を設定させることや、自治体職員増員のための財政措置を求めます。

自らが人間らしく働き、市民のいのちと暮らしを守るために働くことができる自治体をめざしてキャンペーンを成功させましょう。

33キャンペーンに期待
超勤は心をむしばむ(本庁勤務職員)

私は子育て中の職員です。産休前は年850時間ほど残業していました。

当時の担当業務量は膨大で複雑なものばかりで、異動直後から超勤時間は増え続けました。誰かが代わってくれるわけでも、フォローしてくれるわけでもない状況に、次第に心が冷え込んでいくのを感じました。

繁忙期は毎月100時間以上超勤していましたが、仕事は終わらず、次々に新しい仕事がやってきます。さらにコロナの流行と人員減による繁忙たるや悲惨なもので、何人分だろうという業務を隠れて泣きながら1人でこなしました。

休日も出勤し、家族と過ごす時間はほとんどありませんでした。顔を合わせるのは朝の10分程度で、家族と平日に晩御飯を食べたのは年1回程度です。好きな仕事ができているというやりがいを拠りどころに通勤し続けました。

そんななか妊娠が判明しましたが、結果的には流産となりました。悲しみを何にぶつければいいかわからず、超勤ばかりしてまともな食事をとってなかった自分を恨みました。そして手術後、また超勤を続けたのです。

しばらくして再度妊娠が判明しました。つわりがきつく、座って仕事をするのすらしんどかったのですが、膨大な業務量のため休むことができず、トイレで毎日数回吐きながら仕事を続けました。

産休前最終日の帰り道、思わず涙が出てきました。ここまで妊娠継続できたこと、仕事から解放されたことに心底安堵しました。

公務員はとてもやりがいのある仕事です。けれど、人員が少なく、目の前の仕事をすることで精一杯となり、好きな仕事を前向きにできず苦しめられていることが本当に辛かったです。

超勤は人の心をむしばみます。出産後よく「お母さんが笑顔だったら、子どもも笑顔になるよ」と言われますが、この公務員の仕事もそうです。異常超勤からいい制度、いい施策が生まれるはずがありません。私たちがよりよく働いてこそ、市民に寄り添った制度ができるのです。

 

いのち守る33キャンペーン

自治体で働く職員は時間外労働の上限規制は一定あります。

しかし、労働基準法第33条によって、「災害その他避けることのできない事由によって、臨時の必要がある場合」や「公務のために臨時の必要がある場合」には、際限なく働かなければならないことが定められています。

これにより、コロナ対応に従事する保健所職員の長時間労働が発生しています。

新型コロナ感染症対応職場や本庁職場などで、過労死の危機にある職員のいのちを守ることが喫緊の課題となるなかで、京都市職労、京都府職労連、大阪府職労の仲間でキャンペーンチームを結成。

このキャンペーンには、コミュニティオーガナイジングの手法を用い、長時間労働で苦しむ当事者自身が声を上げ、苦しい実態をさまざまな人と共有し、共感しながら、一人ひとりが励まされ、互いに手をつなぐことで物事を動かす力の集合体を生み出していくといった戦術を組み立てて進めていく運動です。

そのツールの一つとして8月末までに33万人を目標にしたオンライン署名を集め、厚生労働大臣と総務大臣に提出します。

そして労働基準法第33条にもとづく時間外勤務に上限規制を設定させることや総務省に自治体職員増員のための財政措置をさせることをゴールにしています。