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2022年06月03日

わたしの仕事と市民の生活 My work for the whole community「ひきこもり支援の現状」

ひきこもり支援は人の尊厳を守る仕事

2020年8月1日付で、各区役所・支所の保健福祉センターの健康長寿推進課に、「寄り添い支援係長」が1人ずつ、計14人配置されています。

さまざまな原因によりひきこもり状態になっている人や、その家族に寄り添い、その人に合った支援や施策につなげる重要な役割を担っています。

担当の組合員に取材し、現状と課題を聞きました。


ひきこもり支援のかなめ
寄り添い支援係長

学校や仕事に行かず、自室からほとんど出ない、自室からは出るが家からは出ないなどの状態が6カ月以上続いた場合、ひきこもりと判断されます。

学齢期の不登校から高齢者まで、現在ひきこもりの状態になっている人の年齢の幅は広く、中でも全国ひきこもり家族連合会の『KHJ全国実態調査報告書』では、2010年によると、40歳以上の割合が10%程度だったものが、2021年には30%を超えています。

子が親を介護することとは逆の、80代の親がひきこもっている50代の子どもの生活を支えているという「8050(はちまるごうまる)問題」も社会問題となっています。

京都市では、2013年にひきこもり地域支援センターを設置し、年齢や施策ごとに支援を行ってきました。

8050(はちまるごうまる)問題の顕在化や新型コロナ感染拡大の市民生活への影響、ひきこもりの人への支援活動を行なっているNPO団体からの「相談窓口が別れていて分かりにくい」との指摘も受け、2019年10月に「ひきこもり支援のあり方検討専門分科会」を設置し、実効性のある支援体制や関係機関との連携のあり方の議論を開始しました。

2020年8月には、京都市に対し支援や、実現に向けた方策について審議会としての意見をまとめています。それを受けて各区役所・支所の健康長寿推進課に新たに配置されたのが、14人の寄り添い支援係長です。

 

孤立を予防し、尊厳を守る

保健師で、寄り添い支援係長の組合員に聞きました。

ひきこもりの原因は人によってそれぞれ違うため、支援をするときのアプローチの仕方もさまざまで、担当者として「多くのレパートリーを持っておくことが必要」だと言います。

支援を行う関係機関も、どのようなところにつなぐのがベストか、またつなぐタイミングも見極めることも大変重要で、生活保護のケースワーカーの訪問に同行するなど丁寧に関係を作りながら、その人に一番あった場所とタイミングを見極め「一発勝負」で支援につなげます。

ひきこもりの人への支援では、「タイミングを間違えると、またひきこもり生活に戻ってしまい、最初からやり直すことにもなりかねず、難しい仕事です」と担当する組合員。

「今まで保健師の仕事の中で培ってきたさまざまな経験や、自分の持つスキルをフル稼働して対応しています。今の年齢、今までの経験がなければ難しかったかもしれません。ひきこもりは、人が孤立することです。孤立してしまわないように予防や支援することは、その人の尊厳を守ることであり、公衆衛生だと思います」と難しい業務を行いながらも、やりがいを感じていると、熱く語ってくれました。

 

支援にもコロナの影響は大きく

ひきこもり支援は人の尊厳を守るという重要な仕事で、業務が滞ることが、一人の人の人生にも大きく影響を及ぼすことにもなります。しかし、この業務にも新型コロナ感染症の感染拡大やコロナ応援の影響が大きく及んでいます。

担当する組合員も例外なく、応援業務に従事しました。

「今年3月末までは、ずっとコロナ応援業務に従事していました。本務は止めるな、と言われていますが、コロナの応援業務が最優先で、相談の記録や会議資料作成などわずかな時間を見つけてやるしかありません。今年度からは応援業務への派遣の日数など、見直しが若干されたものの十分ではなく、支援につなげるタイミングが何より大切なのに、応援にいくことが優先で、そのタイミングを逃すことになってしまったこともあります。コロナ応援業務も寄り添い支援も、どちらも大事な仕事なので、どちらかの仕事を一旦離れる時には、市民の方や周りの人に謝ってばかりになっていることが辛いです」

本務の縮小など行わず、職員にコロナ応援業務を優先で従事させてきたことが、職員の負担を大きくしています。

今年4月に保健福祉局長名で出された「新型コロナウイルス感染症対応に係る保健師等の応援体制について」(お願い)で、寄り添い支援係長不在時のフォロー体制が示されました。

その中では、支援に支障が生じないように必要な会議等は開催してくださいなどとあります。

1人しかいない寄り添い支援係長が、コロナ応援で不在になることを前提にフォロー体制を考えるのではなく、寄り添い支援業務に専念できるよう、することが求められます。

そもそも応援体制を組まなければ成り立たない、京都市の保健所機能や体制を見直さなければならないことは、寄り添い支援の現場から見ても明らかです。

「今年から今まで京都府にしかなかった家族会が京都市でもできて、本格的に活動を開始します。家族が来てよかったと思ってもらえる場にしたいと思っています。何より孤立化の予防、公衆衛生の充実に繋がると考えています」

大変な業務の渦中にあっても、寄り添い支援の今後の展望を前向きに語る担当する組合員に、保健師としての誇りを感じました。