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2023年02月07日

【中央斎場委託問題】退職不補充でやむなし委託 公共の役割はたせるのか

 

医療衛生企画課は、2022年12月16日、京都市中央斎場で働く職員に対して、2023年度から一部業務を委託化し、それに伴い職員の業務内容を見直すと説明しました。

市民の誰もが一度は利用する施設であり、衛生環境を保持する観点からも、非常に公共性の高い施設である中央斎場の業務の委託化が進むことに、現場の職員からは怒りの声が上がっています。


予期せぬ事態でこそ、役割が求められる

現在、現場での通常業務を担っている職員は15人。今年度末で再任用満了を迎える職員が2人いますが、現業職採用が凍結されているため退職不補充となってしまいます。

運営体制を維持するために、委託化するというのが担当課の言い分です。今回「告別ホール」と呼ばれる、遺族が最後のお別れを行う場所の業務が委託されます。

中央斎場では、すでに「受付業務」が委託されており、委託範囲が拡大されることになります。

現場の組合員は「中央斎場の仕事は、絶対にミスがあってはならない仕事。

すでに委託されている受付業務とも、連携の取りにくさはある。一連の流れで行っている業務を切り分け、そこに委託業者が入ってくるということは、指示1つにも偽装請負になる心配があり、予想外の事態には対応できなくなるのではないか」と委託への不安を語ります。

斎場での業務は、今回のコロナパンデミックや大災害など予期せぬ事態にこそ、役割が求められます。10月に現場の実態を取材したときには、日中に通常の火葬業務を行った後、夜間にコロナ感染者の火葬を行っていたため、休憩時間も取れないほど過密労働のなかでも対応しました。

28年前の1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災の時には、京都市が神戸市などに火葬協力を申し入れています。

神戸市衛生局がまとめた『神戸市災害 対策本部衛生部の記録:阪神・淡路大震災』によると「灘区の30体は京都市斎場が午後5時から受入れ可能ということで、午前11時に、パトカーの先導の下、棺を乗せた自衛隊車両4台と遺族及び市職員の乗った大型バス1台で出発した。(一部省略)京都市中央斎場に到着したのは午後8時過ぎであり、火葬を終了して出発地に到着したのが、翌日の午前2時を過ぎるという状況であった。予定時間が大幅に遅れたにもかかわらず、京都市の職員から気持ち良く対応いただいた上、深夜の帰神でも遺族から同行職員への感謝の言葉がかけられた」と記述されています。

神戸市の発表によると、1月21日から30日までの10日間に他都市に火葬を依頼した件数は366件。うち110件を京都市が受け入れています(2012年8月2日・第1回京都市中央斎場のあり方検討委員会資料より)。

厚生労働省も阪神・淡路大震災をふまえ、都道府県に対し広域な火葬体制を整備するよう文書が出され、2018年3月時点で47都道府県中37都道府県が「広域火葬計画」を策定するなど大規模災害時の自治体間の連携強化のきっかけとなる役割を果たしています。

高い技術の継承は、採用の再開で

2012年に提出された『京都市中央斎場の将来のあり方についての提言』では、「高い火葬技術は、遺族に対してのおもんばかる気持ちや誠心誠意尽くす精神ともに、先輩職員から教えられて習得し、後輩職員へと伝承されてきたものであり、現在も研修やミーティング、日々の火葬において着実に伝えられている」と、火葬業務を担う職員の技術の高さが明記されています。

今回、業務の見直しの中では、当面は、火葬業務等を直営で維持すると言いながらも、今後、業務範囲の拡大を示唆していることにも、現場の職員は危機感を感じています。

委託業者への研修やマニュアルだけで引き継げるものではない、高い火葬技術と、市民サービスを確保するためにも、現業職採用の再開が強く求められます。